テンヨー2025年度新製品の雑感

テンヨー新製品が出ました。店頭に並ぶのはもうちょっと先かもしれませんが、一部ネットショップ等では既に発送が始まっています。また公式のオンラインショップでも予約が開始されているようです。

新製品のラインナップは完全新規が3品、過去作のリニューアルが2品という組み合わせになっています(ピラミッドミステリーの復刻があったのはびっくりしました)。このうち前者の3作について雑感を残しておきます。

個々の作品の前に総合的な話を。

今回からパッケージや解説書の仕様が改変されました。最も大きいのは解説書にQRコードとリンクが付属し、実演・解説の映像が付随するようになったことです。分かりやすさが向上したと言えますが、そもそもテンヨーの解説書は手品の解説として世界一分かりやすく書かれていると思います。それでも世の中の95%の人は解説書をちゃんと読まないので(この数字は僕の感覚では誇張ではない)、動画で理解しやすくなるのであればまあ、いいことでしょうね。初心者の人がテンヨー製品を演じているところなどを見ると、「あー、あなたはたぶん〇〇の部分にやりづらさを感じているんだろうけど、その部分への対策は解説書にきちんと書いてあるんですよね……」と言いたくなることが時々あります。もちろん初心者なので仕方ないんですが。手品は難しい……。

実演映像を見た印象ですが、3作品とも事前に現象説明の文面から想像していたより不思議であったりクリーンに見えました。

①ワンダリングボックス

テンヨーは購買層として、初心者から経験の深いマジシャンまでを想定していると思うのですが、幅の広い購入者を満足させる懐の広い道具だなと思いました。簡単さで言えば一番簡単で、手続きさえ間違えなければ誰でも確実に演じられるようになります。解説されている通りにやると本当に現象が起こるので一人遊び向き。しかしハンドリングに研究の余地があるし、現象や演出のアレンジもいろいろな可能性が考えられます。

メカニクス的にも興味深いところがあります。考案は田中ひろき氏なのですが、以前に氏の作品であった『サイコロ大集合』などにも通じる、「シンプルな仕組みで予想以上の効果」といった趣です。

事前の予想では「A→B」「B→A」といった2種類の位相を切り替えられる道具だと思っていたのですが、実際には「A/B/C(うちひとつは空っぽの状態)」という3つの位相を好きな順番で何度でも推移できる機構になっており、ここが意外でしたし、応用範囲の広さをもたらしているポイントでもあります。

②逆再生ミラー

奇作と言えますが、かなり好きです。ぶっちゃけ一番いじっている時間が長い道具はこれですね。

少なからぬ人が言及している通り準備にはそこそこ時間がかかります。ただ、事前にそのような前評判を聞いて身構えていたよりは……という印象でした。これより面倒な準備を求める手品はいくらでもありますし。個人的には、インストラクションを見ながら作業する時間とかって嫌いじゃないんですよね。今回から動画が付いたのもあって説明に理解しづらい部分はないですし。むしろメインの作業より、本当に貼られているのか疑いたくなるぐらい薄い保護シートを剥がすのに一番苦労しました。

これもやってて楽しいですねー。現象だけ取り出すとMr.マリック氏なんかがテレビで披露してても違和感なさそう。ただしこれは映像で見るより肉眼で見たほうが効果が強いというか、感動が大きいと思います。事前予想では現象が短すぎて妙な一発ネタみたいになるのでは? と思っていたんですが、割とゴツめのナットで鏡をカチ割るというマジシャンの奇行から始まる手順となっていました(「割れない鏡を紹介します」→割れちゃう→直すという流れ)。いいっすね。

③シックスセンスキューブ

おそらくは一番ストレートに不思議なのがこれです。最も人前で演じてみたいという気にさせられました。

古典的な数理トリックに基づいているという風に解説書には記されていましたが、解説を読んでもすぐには何が元ネタか気付かず、ちょっと考えないと分かりませんでした。もちろんそれ以前に実演映像を見た段階では全然勘付かず。これは原理の応用の仕方が優れているということなのだと思います。

2~4人に見せられます、とだけ現象説明にあったので、1人相手だと何か都合悪いんだろうか? ”釣り”とかさせられたらどうしよう……などとも予想していたんですが、杞憂でした。

6面体の形状であることの意義などについても考えてみましたが、やはりよく考え抜かれている道具だな、と納得させられます。メンタルマジックなのであとはプレゼンにすべてがかかってくるでしょうね。

個人的には、ある重要な部分のハンドリングに関してもうちょい大胆なやり方を採用したいなと思ったりもしています。

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どの新製品も魅力的で多様な良さがあり、それゆえどれが強くお勧め、とかも特にないです。全部良い。手品ファンはまあ全部買うと思いますが、絞って買うのであれば好みの現象で決めればいいと思います。

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