大林宣彦の逝去
大林宣彦が亡くなった。感染症の影響がなければ最新作が公開されるはずだった日に。いつ亡くなってもおかしくないコンディションではあったろうと思う。それはあらかじめ分かっていたはずだったが、でもやはりニュース速報を見てしばらくのあいだ黙りこくってしまった。静かで物腰柔らかながら落ち着いた力強さも感じさせる声のことを思い返す。晩年は声を発することすら大変そうに見えたが、あの聞きよい声に乗って語られる思慮深い言葉たちが頭をよぎる。
月並みなことしか言えないが、しかし人は死んでも映画が残る。大林宣彦以外の誰も撮らないような、奇怪で、過剰で、不自然で、情熱的で、理解する前に感動してしまう不可思議な映画たちはいつまでもある。映画は死者を何度でも蘇生する装置であり、半ば死の世界と通じているところがある。彼岸に属する者たちこそが、むしろ生き生きと画面に現出するのが大林宣彦の映画ではなかったか。だからこの先も氏の映画は面目躍如とばかりに精彩を放ち続けるはずである。映画が人の手によって上映/再生される限りは。
本当に陳腐なことしか言えなかったが、どうしても書かずにいられなくて書いてしまった。